小さなフラードーム小屋をつくる(その10)

ミニドームの外壁を無垢の木にしたい。

屋根は鉄板やアスファルトシングル
と決まっているように感じますが、
木にすることが出来れば
確かにドームは更に美しくなりそうです。

しかし、木は腐ります。
腐ってしまうのです。

そこでいろいろと候補を考えていました。

船のデッキに使用されるイペ、セランガンバツ等の
ハードウッドがまず挙げられます。

しかしこれらは、
屋根に張るには重たすぎる事や、
釘さえ打てぬほど堅い材料だという欠点があります。

また、
こういった材は全て外国から来た輸入材。

やはり国産材を使いたいです。

そこで今回は、
国産の杉を特殊な熱処理を施すことによって
「腐りにくい無垢の木」
に変質させたエステックウッドを試してみることにしました。

熱処理することによって、
高度に乾燥させ、
木材内部の腐る養分を減少させているそうで、
とても軽く、
屋根に張るには最適です。

手に取ると
バルサ材の様に軽く、
着色したような焦げ茶色。

強い薫製の臭いがします。

もうこれが杉だとは
分からないくらいの変質感。

確かにシロアリや虫も、
食べるところが無さそうなのです。

また、
木材内部の細胞構造が変わり、
多孔質化しているため、
耐久性能が上がっているだけでなく、
断熱効果もあるそうなので、
屋根面にはピッタリの材料のようです。

サンプル材を手に入れて
実寸大の三角を作ってみたところ、
予想以上の美しさになりました。

節もなく、
日に当たると
キラキラと輝くほどにきれいなのです。

これは良い!
すごく良いかも。

と良い意味でショックを受けました。

この材でドームを包み込めば、
かなり美しく
高級感が増すこと間違いなしと確信し、
これで進めることにしました。

しかし問題は、
腐りにくいとは言え、
やはり木材であること。

そこで、
湿気や水が裏側に溜まらないよう、
浮かせて施工することにしました。

表も裏も、
いつも乾燥する状態を保ていれば、
カビることも腐ることも避けられます。

大きなドームハウスの場合は、
ドームを二重にし
屋根の下に通気層を確保していますので、
それと同じ工法です。

しかしこの小さな三角を二重にし、
且つ、
通気用の空気の流入口と排気口を作るのは
相当大変な作業です。

三角ひとつひとつが小さすぎる上、
今回の設計では
てっぺんに5箇所も天窓があり、
天窓同士の間隔がたったの数センチ。

サイドの窓や庇周りについても同様で、
物と物が取り合う隙間がとにかく狭い。

いつものように、
下の土台のところから空気を入れて、
トップのドームのてっぺんから
熱気を抜く手法を取ろうにも、

トップライトが邪魔して
排気口を作れそうにないのです。

下から入って上に抜くのは、
暖められた空気が
自然に上に向かって上がっていく
上昇気流を利用してのこと。

しかし、
そもそも二重にさえなっていれば、
空気の給気口と排気口を決めてしまわなくても、
どこから空気が入っても出ても
問題なく機能するのでは?
との考えに至りました。

結果、
全ての三角の周りにスリットを開け、
半球ドーム全面のスリットから
空気が出入りできる、
新しい屋根通気装置とすることにたどり着きました。

 

次は、
三角を浮かせて施工する工法です。

これは通常の屋根通気と同じです。

しかし、
通常の屋根通気で使う下地材となる通気胴縁は、
木で出来ています。

水は入らないことが前提ですので、
腐ってしまう心配がないからなのですが、
今回は、
通気層の中を水が流れてしまう仕様。

防水面に木があるのは問題です。

そこで、
瓦を取り付ける際に使用する、
樹脂製の瓦用下地胴縁を使うことにしました。

15x30mmの樹脂の棒を、
短く切って仕上げパネルに裏打ちします。

本体の方にも、
通気の邪魔にならないように付けておけば、
厚み分の15mmの間隔を開けて浮かせ、
屋根仕上げ材を全面に張ることが出来そうです。

これで行ける!

エステックウッドドームの仕様が決まりました。

現場で一枚一枚、
細長い台形の板を張っていくのは
余りにも大変な作業です。

そこで、
先に加工場でパネル化しておくことにしました。

出来上がった90枚近くのパネルは、
軽トラに載る量。

思いの外、軽くていいのです。

 

 

現場では、
防水層の上に通気下地を貼り付けていきます。

なんとその数528個。
2日も掛かってしまいました。

 

 

屋根材を張るには、
サッシや庇を
先に取り付けておかなければなりません。

ここで、
何ヶ月も掛けて開発した
アルミサッシの登場です。

 


いくつもの失敗製作を乗り越えて
出来上がったものですので、
ピッタリ。

庇との取り合いも、
開けられる押し出し窓も設計通りです。

これに特殊な防水素材を挟み込み、
錆びにくいコーティングされたビスで留めていきます。

アルミは柔らかく、
強くビス止めをすると
ふにゃっと曲がってしまうのですが、

下地の防水シートが
2重3重になっているところや
場所によっては5重にもなっているところがあり
取り付けられる下地が平らではありません。

逆に少しゆがんだサッシ枠が
凸凹の下地に追従して
良い結果になりました。

室内側もサイズはピッタリで、
高級感が増したように感じます。

サッシが取り付けられると、
工事現場から一気に家っぽくなりますね。

平行して玄関ドアの枠回りも作り込みます。

 

窓の上にアルミ庇を取り付けると、、、

カッコいいですね~

そして次は
やっと仕上げの三角パネル。

下から付けると
自分が上れなくなってしまいますので、
まずはてっぺんの5枚から取り付けることにしました。

 

こうして並べてみると
日に当たったアルミサッシとの取り合いや、
きらきらした感じが本当に美しく、おぉー美しいぃ~と皆からどよめきが。

しかし、またここで
次なる問題が発生してしまったのです。

あらららら、、、

ドームハウスにご興味をお持ちの方へ

一人で家族のみの協力の下で始めた、森のドームハウス建設に始まり、
ドームハウスの専門家が集まり始めたドームドリーマーズを経て、
より多くの方々への情報を伝えるためのドームハウスインフォ設立に至りました。

 

お陰様でドームハウスの実績や活動内容も充実してまいりましたので、
カタログを制作してお届けすることができるようになりました。

ドームハウスにご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

catalog

ABOUTこの記事をかいた人

アバター画像

一級建築士事務所 studioPEAK1(スタジオピークワン)代表。 山梨の県北、南アルプス山脈甲斐駒ヶ岳の懐に位置する白州町の森にて建築・設計活動をしています。白州に活動の場を移して十数年。この自然の中でしか感じることが出来ない事を学び吸収し、建築に反映してきました。技術力やデザイン力のみではなく、心からわくわくし、楽しくなる建築をめざし日々精進しています。