ドームハウスの構造計算:シミュレーションの結果

「ドームは強い!」
「圧倒的に強いので、地震も台風も大丈夫!」と思っている方が多くいらっしゃいます。
しかしそれは危険です。
と言う話を、今回は深掘りしていきます。

「建築士に見てもらったらドームはトラス(三角の集まり)なので細くても全く問題ない」とか、「アメリカで売っているドームキットだってツーバイ材のみなのだから大丈夫」
というのも同様に危険な考え方です。

実際に大雪に見舞われたり、台風や地震を受けたときに、ドーム自体がどのようにその強大な力を受け止め流しているのかを知らないことから出てくる言葉ですね。
見た目や感覚で建築を語ってはいけません。
必ずそこには技術的な裏付けが必要となります。

 

十数年前、私たちはフラードームの構造計算を、誰に依頼しても、誰に尋ねても、一人として正しく計算出来る人に巡り合いませんでした。
そこで大学の木造建築の専門家を訪ね歩き、大学から大学、先生から別の先生へと紹介をしていただき、最終的に分かったことは実際に壊してみて、実験をしてみて、データを取り解析してみないと分からない、ということでした。

センサー設置作業中

そしてその後、何年もかけて破壊実験を繰り返し、フラードームの、ドームハウスの構造計算方法を導き出して行きました。
それ程までに複雑であるがゆえに、もちろん手計算では解けません。
コンピュータの高い演算能力により、初めて解くことができるものです。

初公開、破壊実験動画!

2021.07.10

 

そのような研究開発活動の中で生まれたドーム専用の構造計算ソフト。
これを使えば、ある程度簡単に安全性を確かめることができます。

 

そこで今回は、冒頭の話、ドームは強いので細い材でも大丈夫?なのか、アメリカのドームの様にツーバイ材のみで大丈夫?なのかどうか、実際に構造計算を行い、確かめてみたいと思います。

構造計算と聞くと、その難しそうな響きから聞き流してしまいそうですが、計算結果の絵を見るだけでも、その危険性を感じ取れると思います。

 

まず最初は、雪の多い地域。
北海道のように広い雪原が広がっている地域にこそ、ドームハウスのような自由な建物が似合います。

雪が多い地域には「豪雪地帯」「特別豪雪地帯」「多雪地域」等があります。
今回は、豪雪とまではいかないまでも、2m以上の雪が降るような地域にてシミュレーションをしてみましょう。
北海道のみならず、東北や北陸、甲信越にもこういった地域は多くあります。

雪は上に重たいものが長く載っている状態を計算します。
私たちのソフトでは、色で安全性を確かめることができるモードがありますので、まずはそちらを。


赤は危険、壊れてしまう、という意味です。
オレンジも危険、黄色は注意。
水色は周りよりも大きな力はかかっているが大丈夫。
青は安全です。
そんな風に視覚的に全体の危険性を確かめる事ができます。

いかがでしょうか?
真っ赤っかですね。
これは、超危険ということを表しています。
折れますよという意味になります。

では、上に大きな荷物を背負ってしまったらどういう風に壊れていくかをシミュレーションしてみましょう。

これは、今まで何度となく木造の専門家・研究者たちと壊れ方を想定していた通りになっています。
視覚的にわかりやすいように、少々デフォルメしてありますが、正にと言う結果になりました。
(シミュレーション画像での各三角構造内の十字フレームは、単に面を表しており、実際の施工方法とは異なる)

ここで最も注目しなければならない点は、「立ち壁」の壊れ方。
ドーム自体が載っている四角い壁です。
三角が5個集まっている五角形の直下の四角い壁。
これが外に倒れる様に壊れています。
ドームは外に開くように壊れる。
これを「スラスト」と言い、外に広がる力を抑えるように、タガをはめなければなりません。
私たちのドームハウスは、この「立ち壁」部分をコンクリートで作ることによって、広がる力を押さえ込むように作っています。

ある工務店さんが作ったドームの現場を見た時に、ここに大きな梁を入れていたドームがありましたが、それでは広がる力を抑えることはできません。
梁は上からの力を受けるものであり、広がりを押さえる為には働きません。
壊れようとする方向が分かっていないことが原因といえます。

これは一例ですが、コンピュータの中で壊してみることが出来るようになったのは、設計上とても大きな進展です。

 

では次に、問題のツーバイ材(SPF材)で作られたドームはどうなのか。
どれくらい強いのかを見てみましょう。

こちらは関東。
このように、雪が多い地域ではないのに、あちこちに赤い危険マークが出てきてしまっています。
私たちは、これを安全に作るために国産の「桧」にした上で、更に材の断面サイズを大きくしています。
厚みを増やし、梁成(材の高さ)も大きくします。
また、場所によって大きく力が加わるところが分かりますので、そこだけは特別に太い材を使用しています。
どこをどれだけ太くすればいいのかは、大雪の時、台風の時、地震の時、とさまざまな条件下での荷重の掛かり方を計算し、壊れ方をシミュレーションをすることによって求めていきます。

 

そして次に、こちらは沖縄。
強風にも強いと言われていますが、盲信と言わざるを得ないような結果になります。
屋根が丸いために強風もつるっと上を抜けて行ってくれそうですが、実際は後ろ側の屋根が巻き込む風の力によって外に引っ張られてしまい、広がるように壊れて行きます。

材に掛かる力は圧縮のみではなく、上へ(空へと)また同時に外へと広がるような力が生まれることを考えなければなりません。

ちなみにこのシミュレーションは、一般的に売られているSPF材 2x8によるものになります。

 

最後にこちら、安全設計が終わったシミュレーションです。
なんだか安心しますよね。

強風がどのように建物に影響するか、特に丸い屋根に対してどのような力が加わるかに関しては、海外の翻訳ものの本には、丸いのでつるっと上を抜けていくと簡単に書かれていますが、残念ながらそうではありません。
日本建築学会の構造指針にも、その複雑な計算方法が示されています。

 

さて、ではなぜ建築の専門家までもが間違えるのか。
それは「トラス」は強過ぎるほど強いという思い込みからなのではないかと思います。
もちろん三角の集まりは強いです。
しかしそれは作り方によります。

鉄骨のトラスは問題なく強いでしょう。
しかし、木だけで作られている木造ドームはかなり動きが異なります。

10m以上の大型のドームハウスは、三角ひとつのサイズが一辺2m前後。
この2mもあるフレーム材が、専門家であっても「曲がらない」と考えてしまうのです。
実験をしてみて分かったことは、三角の各辺は曲がります。
トラスですが、圧縮材になっていないということです。

東京タワーやエッフェル塔、瀬戸大橋が折れないのは、全てのトラス材が両端から押さえ付けられてぎゅっと圧縮しているだけの構造だから強いのです。
各辺が曲がってしまうと、その計算は成り立ちません。
圧縮だけで計算してしまうと、トラスのドームは超強力な構造体です。
しかしそうではない。
それを知るだけでも、危険なことが分かりますよね。

構造計算をしていないから細く出来る、安価に作れる、となってしまっている事が木造建築には往々にしてあります。
賢い選択が必要です。

ドームハウスにご興味をお持ちの方へ

一人で家族のみの協力の下で始めた、森のドームハウス建設に始まり、
ドームハウスの専門家が集まり始めたドームドリーマーズを経て、
より多くの方々への情報を伝えるためのドームハウスインフォ設立に至りました。

 

お陰様でドームハウスの実績や活動内容も充実してまいりましたので、
カタログを制作してお届けすることができるようになりました。

ドームハウスにご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

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一級建築士事務所 studioPEAK1(スタジオピークワン)代表。 山梨の県北、南アルプス山脈甲斐駒ヶ岳の懐に位置する白州町の森にて建築・設計活動をしています。白州に活動の場を移して十数年。この自然の中でしか感じることが出来ない事を学び吸収し、建築に反映してきました。技術力やデザイン力のみではなく、心からわくわくし、楽しくなる建築をめざし日々精進しています。