家づくりのことを考える時、特に家の値段や価値を理解したい時には、どのように設計され作られているのかを知ることが大切です。
外からの見た目はほとんど同じなのに、ずいぶん高い家もあれば、安い家もありますよね。
値段の違いはどこにあるのでしょうか。
今回は、見えないところの重要性をお伝えするために、私たちが採用している「通気工法」という作り方についてお話し致します。
【1. 通気工法とは何か】
通気工法とは、建物の「外壁」の中に空気を通す仕組みのことを指します。
この工法が特に重要となるのは、温度差が激しい環境です。
例えば、寒冷地では外気温がマイナス10℃以下(八ヶ岳別荘地にて)になる一方で、室内温度はプラス20℃以上になります。
つまり、外と中との温度差は30℃以上。
冷蔵庫と同じような状況です。
直射日光が当たっている屋根の上のことを考えると、屋根の外部表面はサウナ同様100℃を超えてしまうため、夏の暑さが厳しくなってきている近年では、日本中どこでも激しい温度差にさらされてしまいます。
特にドームはほとんどが屋根ですので、屋根面の作り方はそのまま家全体に大きな影響を及ぼすことが容易に想像できますよね。
【2. 通気工法の重要性:耐久性と健康】
そのような厳しい環境下では、「通気工法」がとても重要な役割を果たします。
その理由の一つは、壁や屋根内部の湿度をコントロールすること。
もし通気工法がないと、湿った空気が断熱材の中に閉じ込められてしまい、「結露」を引き起こすことにつながります。
これは、寒い日に車の窓ガラスが水滴でいっぱいになるのと同じ現象。
湿気は木材にカビを発生させ、腐らせ、家の構造的耐久性だけでなく、住む人の健康にも直接的な影響を与えてしまいます。
また、湿度と温度の適切な管理は、シロアリの発生を防ぐことにもつながります。
シロアリは、特に湿度が高く、温度が安定した環境を好む生き物です。
したがって、乾燥を促進する通気工法を採用することは、シロアリによる被害を防ぐ有効な手段でもあります。
【3. 通気工法のメカニズム】
通気工法は、湿った空気を結露になる前に外に出すための「空気の通り道」を壁の中につくる工法です。
壁のの内部に一定の厚み(18mm前後)の空気の通路(通気層)を設ける。
つまり、半径5mのドームの外側に、半径5mと18mmのドームをかぶせるような形で、二重のドームを作っている訳です。
外壁に太陽が当たると、この通気層の中の空気が温まります。
空気は暖められると上昇し、外へと逃げ出す動きをします。
この自然の流れを利用して湿った空気を外部に排出し、内部の湿度を下げる、つまり家自体を乾燥させることができるのです。
【4. 通気工法の利点:エネルギー効率と快適性】
通気工法はまた、エネルギー効率を向上させる役割も果たしてくれます。
壁や屋根の内部に通気層を設けることで、冷暖房の効率が上昇し、結果的にエネルギー消費が抑制されます。
つまり、通気工法を採用することは、エネルギー費の節約にも貢献します。
家全体の温度を安定させ、結露やカビの発生を防ぐことによって、健康的で快適な居住空間を維持するだけでなく、光熱費の大幅な削減にもなるんです。
【5. 通気工法:長期的な投資】
通気工法を採用することによって家の寿命が延び、メンテナンス費用が抑制され、エネルギー効率の向上によって長期的なランニングコストも抑えられる。
光熱費が高騰している今、その効果は高いと言えます。
特に大きな吹き抜け空間のあるドームハウスの場合、その冷暖房効率を考えることは大切な設計要素の一つです。
【6.問題のカビ】
通気工法を採用していない家では、特に日が当たらない北側の部屋の壁がすぐに冷たくなります。
冷えた部屋に室内の湿った空気が入り込むと、壁や天井などに「結露」が発生しやすくもなります。
この結露が壁の中で発生すると、壁の中にある断熱材や建材にカビが大量に発生し、壁の中がカビだらけに。
車の中で窓ガラスがびっしょり濡れていることはよくありますよね。
車内の湿った空気が、冷たいガラスに触れると水になります。
室内の湿った空気が、冷たい壁面に触れても同じ事が起こります。
もしそれが壁の中だとしたらどうでしょうか。
室内の壁紙を貼り替えるようなリフォームを行ったとしても消えることはありません。
壁の中のカビ臭さは、台所や浴室の換気扇を回し、室内が負圧になったときに室内へと流れ込んできます。
その結果、家全体がいつもなぜかカビ臭く、不健康な状態になってしまうのです。
家の北側には浴室やトイレ、台所など、湿気を多く出す部屋が配置されることが多いです。
壁体内結露を引き起こす原因となるため、そういった意味でも通気工法の採用が望ましいと言えます。
家の中をいつも健康で快適な環境に保つことができるのは良いですよね。
【7. その他の利点】
二重屋根の採用は熱や湿気のコントロールだけでなく、他にも多くの利点をもたらします。
特に重要なのが、二重屋根の間に貼る熱を反射するアルミ膜。
このアルミ膜は、内部の熱を逃がしにくくし、外部からの冷気や熱を反射してドーム内部の温熱環境を安定してくれます。
保冷バックがアルミ箔で出来ていることもおなじ原理ですね。
電子レンジや電子機器類も、電磁波をカットすることを目的としてアルミ箔でカバーされています。
同様に通気層内に熱コントロール用のアルミ箔を施工することは、同時に外部からの電磁波さえもシャットアウトしてくれる家を作ることにもつながります。
その他にも、二重屋根は外の音が伝わりにくくなり、雨音が直接入ってこないという特性や、万が一屋根が壊れて雨漏りしても、通気層内を流れて出て行ってくれるため、雨漏りの予防にも大いにつながります。
【8. まとめ】
昔初めて建てたドームハウスは、安く大きく作ることだけを重視してしまい通気層のない一重屋根を採用してしまいました。
その結果、夏の二階はエアコンがないと暑くて過ごせない家になっただけでなく、多くの恩恵を手放してしまいました。
現在、私たちがつくる全てのドームハウスには、二重屋根の通気工法を採用しています。
家づくりは、屋根や壁、地面の中の見えないところをどれだけ考え作っているのかが大切ということですね。
建設費用を考える時、工務店さんからの見積りをチェックする時、その費用はどういった内訳になっているのかを細かく知ることが大切です。
安い家には安い理由が、高い家には高い理由が必ずあります。
高性能なのに安いというのは、それぞれ必要とする材料にコストがかかるため、残念ながらあり得ません。
賢い選択をしたいものです。