セルフビルドを始めようとしたけれど(その2)

数学的にジオデシックドームの形状を導き出すことは出来そうです。
100枚前後の三角を空中に立体的に描く。
XとYとZ座標を算出し、それを結んでいけば線画ではあってもドームの形状をモニターの中であれば作り出すことができます。
一度立体を作ってしまえば、全ての三角の角度はドームの大きさに関係なく相似ですので、変わることはありません。
直径をいくつにするかによって、各辺の長さだけを変えてやれば良いわけです。

初期型のジオデシックドームには、2種類の三角しかありません。
2種類の三角をつくれば、家が出来る。
たった2種類。
同じ大きさ、同じ形状、同じ作り方。
こつこつと三角を作り、繋ぎ合わせれば家になる。
木造建築に不可欠な、柱と梁を組み合わせる為の加工である「仕口加工」を全く必要としないのは、セルフビルダーにとっては最適です。
そんな漠然とした妄想と共に、夢がどんどん広がりました。

それぞれの三角は屋根になる訳ですので、野地板ベニアを張ることになります。
なるべくベニアを無駄なく使えるような大きさにすれば、安く作れるかもしれない。
そうするとドームの直径は敷地の大きさに合わせて決めるのではなく、三角の大きさから決めた方がいいのかも?
ジオデシックドーム独自の考えも深まっていきます。
野地板ベニアの寸法を考えるのは、導き出した三角に合わせて決めれば良いだけですので、簡単な事です。
線画の頂点、XYZの座標位置を、トラス軸材の外側、つまり野地板の内側に来るように設定すれば大きさは確定できそうです。

しかしその野地板ベニアを打ち付ける下地の梁はどうすれば良いんだろう。
三角を組み合わせるトラス構造が強いのは分かっていますが、そのトラス材の太さは? 断面形状は? 繋ぎ方は?
そもそもトラス構造は通常鉄骨で作るものです。
鉄ではなく木材で作りたい。
多くのことがハテナだらけでした。

アメリカから仕入れたドームブックを見ると、様々な試みが載っています。
しかしどれも建築とは言い難いものばかりで、雨が降らない地域なんだろうなあとか、地震がないからこれで保つんだろうなあと言ったものばかり。
真似をするには怖すぎるような実験建築がほとんどでした。
また併せて、普及し始めたばかりのインターネットで、世界の情報を集める事もしました。
集まる情報はネット環境が整っている国で、且つ英語圏に限りますので、ほぼアメリカの情報しか入りませんでしたが、建築として成立しているドーム情報をいくつか集めることが出来ました。
商品としてまともなドームハウスを施工していたり、パーツを販売している会社があることまで分り、その内の何社かとはコンタクトを取ったりもしました。

 

考え方は、大きく分けると2種類に分けることが出来ます。

1つは、まずトラスとなる「軸」を作り、後から野地板を張って面にするもの。
もう1つは、はじめから「面」を作り、組み上げてドームにするものです。

 

「軸」式の場合は、ドーム形状を作り出す「トラス材」となる軸材を一本だけで作ることができます。
計算によって導き出した各頂点同士を、軸材、つまり木材でつなげさえすればドームになります。
計算さえ間違えなければ、球体を作る事ができる。
考え方は至極簡単ですので、実験ドーム集であるドームブックに載っている事例はほとんどがこちらのタイプです。
難しいところは各頂点となる、折れ曲がっている所をどうやってつなぎ合わせれば良いか。
皆いろいろな方法で、千差万別、もう自由研究状態です。
ただ単に球体になるように軸材をつなげるだけであれば簡単なのですが、力が集中する接合部分は、強度を出さなければなりません。
それさえクリアーすれば、軸が一本で良いと言うことは、加工する材料が少なくて済むため魅力があります。
接合部のコネクター製作の問題もありますが、組み立て時の高所作業が多くなってしまう問題もあります。
鳥かごのような軸材だけから成るドームを作った後は、野地板ベニアを張ったり、その下地となる間柱材を組んだりする大量の作業を、高所で行わなければなりません。
トラス材も、下地の間柱材も、野地板のベニアも、一本一本、一枚一枚、手作業でドームの上まで運び、施工していくことになります。
まるで大きなジャングルジムを登るように、材を抱えて這い上がり、高所で組み立てていくことになります。
クレーンは必要ないですが、一人での長時間の高所作業には、忍耐が必要です。
またそれが出来上がるまでは屋根が張れないということですので、作業の間、雨もどんどんドーム内に降ってきます。
一人でのセルフビルド作業を考えると、何週間も雨ざらしが続くことになります。

 

対して「面」式。
「面」式の最大の特徴は、こつこつと地面で野地板まで張った状態の三角パネルを作り続けさえすれば、一気に屋根下地を張り終わった状態にまで組み上げる事が出来るところにあります。
最小限の組み合わせであっても、三角パネルの数は60枚になりますが、地面でゆっくりこつこつと組み立てれば、一人で作るとしてもいつかは終わります。
クレーンを使っての組み上げ作業は、パネル作りに間違いさえなければ、2~3人で2日から3日あれば完成します。
パネルが組み上がったと同時に野地板まで出来上がっているため、大きなブルーシートをかぶせれば、雨対策まで完了。
一気に何十帖もの、柱も梁もない大空間が出現する訳です。
この概念はまさに夢のよう。
防水工事や屋根仕上げ工事はあるものの、作業場となり得る大空間が一気に手に入るのですから。

さて、どっちが良いんだろう。。。
情報を集め、計画を練っていると、セルフビルドでのドームづくりが、だんだんと現実味を帯びてくるように感じて来るのでした。

ドームハウスにご興味をお持ちの方へ

一人で家族のみの協力の下で始めた、森のドームハウス建設に始まり、
ドームハウスの専門家が集まり始めたドームドリーマーズを経て、
より多くの方々への情報を伝えるためのドームハウスインフォ設立に至りました。

 

お陰様でドームハウスの実績や活動内容も充実してまいりましたので、
カタログを制作してお届けすることができるようになりました。

ドームハウスにご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

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ABOUTこの記事をかいた人

和田 啓宏

一級建築士事務所 studioPEAK1(スタジオピークワン)代表。 山梨の県北、南アルプス山脈甲斐駒ヶ岳の懐に位置する白州町の森にて建築・設計活動をしています。白州に活動の場を移して十数年。この自然の中でしか感じることの出来ない事を学び吸収し、建築に反映してきました。技術力やデザイン力のみではなく、心からわくわくし、楽しくなる建築をめざし日々精進しています。