ドームを建てるぞ!と決心したは良いものの、
買いたくても売ってない為、
「自分でつくる」という選択肢しかありませんでした。
しかし、いざ作るとなると、
複雑な構造故に、設計や計画が非常に難しい。
と言うか、教本や教材がないために、訳が分からないのです。
これは大きな問題でした。
ドームの三角構造は、通常の家と異なり、
短いパーツだけから成り立っています。
これをドーム屋根を作るために短く切りそろえていきます。
役に立たない短い材料が大量に出来てしまいます。
普通の家以上に高くあります。
設計がとても大切な建物なんですね。
いろいろと考えなければならないことがありますが、
まずはドームの外殻、
外側の表面を構成する材料から考えることにしました。
最初は野地板ベニア。
ベニアは構造用合板と言われる、
JASにて規定されている構造専用の合板を使用します。
針葉樹合板が一般的ですが表面がざらざらだったり、
節が抜けていたりで、きれいとは言い難いです。
しかしそれでも、
コンクリート型枠用のコンパネ、
仕上げに使うラワン合板やシナ合板等、
きれいな合板はいろいろとありますが、
構造用で無いものは全て使えません。
ドームの構造を作っている三角構造はトラス構造です。
通常トラスは軸組だけでも強靱ですので、
上に張り付ける面材(ベニア)なんか何でも良い気がします。
無くても良いくらいかも、と考えてもおかしくないくらいです。
しかしここは、面構造としても成立するように構造用の面材(合板)を使用する事にしました。
面構造とは、一般的にはツーバイフォー住宅のような壁式枠組み工法のことを指します。
柱や梁は必要なく、強い壁面を組み合わせるだけで家を作っていく方法です。
ツーバイの作り方は国交省によって厳密に規定されています。
使用する釘の種類はもちろん、
釘を打つ間隔や本数、
打たれる材がどういうものか、
木材の湿り気具合である含水率まで決められています。
釘もツーバイネイルといわれる強度の高い太いものを使用し、
ツーバイ同様に間柱部分にも打つことにしました。面に開ける開口部は、
下地となる間柱を2本抱かせにするとか、
金物を入れるとか、
いろいろと細かいツーバイ規定同様にする事にしました。
当時はなんとなくそれが安全だろうなと考えてのことでしたが、
今となってはこれが正解でした。
近年我々が行っている研究開発実験や、
様々な構造計算ソフトの解析によると、
軸組材だけでは保たないことが分かってきました。
単なるトラスだけの構造体では、
つまり、壊れてしまうと計算されるのです。
さてセルフビルドの話。
当時はまだそこまでの研究や実績がない頃でしたので、
まるで手探りでした。
今までの設計経験から、多分こうだろうなあ、
という設計者としてのある種「カン」のような感覚の積み重ねで、
設計を進めて行くしかなかったのです。