セルフビルドを始めようとしたけれど(その3)

ドームを建てるぞ!と決心したは良いものの、
買いたくても売ってない為、
「自分でつくる」という選択肢しかありませんでした。

しかし、いざ作るとなると、
複雑な構造故に、設計や計画が非常に難しい。
と言うか、教本や教材がないために、訳が分からないのです。
これは大きな問題でした。

ドームの三角構造は、通常の家と異なり、
短いパーツだけから成り立っています。

建材は当然3mとか4mとかの長い状態で仕入れるものです。
これをドーム屋根を作るために短く切りそろえていきます。
もし寸法を間違えてしまうと、
役に立たない短い材料が大量に出来てしまいます。
ドーム作りは、設計や計画を間違えると、
手直しがきかない状態になってしまう可能性が、
普通の家以上に高くあります。
設計がとても大切な建物なんですね。

 

いろいろと考えなければならないことがありますが、
まずはドームの外殻、
外側の表面を構成する材料から考えることにしました。

最初は野地板ベニア。
ベニアは構造用合板と言われる、
JASにて規定されている構造専用の合板を使用します。

針葉樹合板が一般的ですが表面がざらざらだったり、
節が抜けていたりで、きれいとは言い難いです。
しかしそれでも、
コンクリート型枠用のコンパネ、
仕上げに使うラワン合板やシナ合板等、
きれいな合板はいろいろとありますが、
構造用で無いものは全て使えません。

ドームの構造を作っている三角構造はトラス構造です。
通常トラスは軸組だけでも強靱ですので、
上に張り付ける面材(ベニア)なんか何でも良い気がします。
無くても良いくらいかも、と考えてもおかしくないくらいです。
しかしここは、面構造としても成立するように構造用の面材(合板)を使用する事にしました。

面構造とは、一般的にはツーバイフォー住宅のような壁式枠組み工法のことを指します。
柱や梁は必要なく、強い壁面を組み合わせるだけで家を作っていく方法です。

ツーバイの作り方は国交省によって厳密に規定されています。
使用する釘の種類はもちろん、
釘を打つ間隔や本数、
打たれる材がどういうものか、
木材の湿り気具合である含水率まで決められています。

まずはこの規定を守るように作るのが安全だと考えました。
釘もツーバイネイルといわれる強度の高い太いものを使用し、
打つ場所も周囲だけでなく、
ツーバイ同様に間柱部分にも打つことにしました。面に開ける開口部は、
下地となる間柱を2本抱かせにするとか、
金物を入れるとか、
いろいろと細かいツーバイ規定同様にする事にしました。

当時はなんとなくそれが安全だろうなと考えてのことでしたが、
今となってはこれが正解でした。

近年我々が行っている研究開発実験や、
様々な構造計算ソフトの解析によると、
軸組材だけでは保たないことが分かってきました。

構造としての面材が全くない、
単なるトラスだけの構造体では、
木造のドームハウスは計算上成立しません。

つまり、壊れてしまうと計算されるのです。

さてセルフビルドの話。

当時はまだそこまでの研究や実績がない頃でしたので、
まるで手探りでした。

今までの設計経験から、多分こうだろうなあ、
という設計者としてのある種「カン」のような感覚の積み重ねで、
設計を進めて行くしかなかったのです。

ドームハウスにご興味をお持ちの方へ

一人で家族のみの協力の下で始めた、森のドームハウス建設に始まり、
ドームハウスの専門家が集まり始めたドームドリーマーズを経て、
より多くの方々への情報を伝えるためのドームハウスインフォ設立に至りました。

 

お陰様でドームハウスの実績や活動内容も充実してまいりましたので、
カタログを制作してお届けすることができるようになりました。

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一級建築士事務所 studioPEAK1(スタジオピークワン)代表。 山梨の県北、南アルプス山脈甲斐駒ヶ岳の懐に位置する白州町の森にて建築・設計活動をしています。白州に活動の場を移して十数年。この自然の中でしか感じることが出来ない事を学び吸収し、建築に反映してきました。技術力やデザイン力のみではなく、心からわくわくし、楽しくなる建築をめざし日々精進しています。