ドームハウスなら簡単に安く作れるかもしれない。
もしかすると自分でセルフビルド出来るかもしれない。
そんなことを20年近く前に考えていました。
当時は設計用のCADも、今ほど手軽に3d設計が出来るようなものはなく、手計算によってドーム形状を導き出すしかありませんでした。
しかし、その計算方法が分かりません。
まずは、計算式。
あちこち探しましたが、ジオデシックドームの計算方法が載っている本は、世の中にそれほどある訳ではありません。
半世紀前、アメリカでヒッピー文化が繁栄した時期に出されたドームハウスばかりをあつめた本、「DoomBook2」に計算式が載っている事をつきとめ、ある日、オレゴンの古本屋さんに探して貰うよう依頼をしました。
そして半年、オレゴンから待ちに待ったメールが。
古本ですがドームブック2が見つかりました、とメールボックスに返事が入って来たのです。
これがこちら。
海を渡ってきた待望の本です。
本というか、雑誌のような大きさで、中の紙質はまるで新聞紙。
端っこはギザギザにカットされており、手にした最初の印象は正直がっかりでした。
しかし、ページをめくると中の写真と絵に釘付けにされてしまったのです。
60年代70年代を謳歌していたヒッピー達が、自由と夢を求めて作っていたコミューンの象徴としてのドームハウス。
一人で森に入ってコツコツと組み上げた実験住宅のような小屋ドーム。
木で、ベニア板で、鉄で、コンクリートで、と様々な試行風景が、次々に目に飛び込んできました。
毎晩、毎晩、ドームブックを読みふけり、実験建築の世界にダイブする日々が続きました。
そこに広がる世界は、造ることを喜びとするだけではなく、ドームづくりを生きるエネルギーとしているように見え、心からわくわくしました。
そして日に日に造ることへの欲求と情熱が高まって行ったのです。
計算式と係数が載っているページには、手書きでいくつもの数字が書き込まれていました。
アメリカの前の持ち主が、この本を手にドームを作った形跡なのかもしれません。
ここに載っている計算方法は、ドームの輪郭を導き出すものだけです。
三角の頂点3つのx、y、z座標を算出することができます。
sin、cos、tanの三角関数を使い、50カ所近くある三角の頂点の座標を算出する。
しかしここから導き出されるのは、ジオデシックドームの半球を点と線で繋いだだけの線画でしかありません。
いわば、家の輪郭を一本の線で描いたようなものです。
これを木で作るには、、、分からないことだらけです。
ここからがスタート。
まずは設計の、紙の上での試行錯誤が始まるのです。