ドームハウスの設計とその手順

ドームハウスをつくる場合、

三角の屋根パネルだけを組み立てれば家になる訳ではありません。

家づくりは、始める前の計画が一番大切。

時間を掛けてしっかり計画を立てたいです。

 

ハウスメーカーの家は全て設計が終わった家を売っていますので、計画期間は極々短くて済みます。

規定のプランから好きな物を選び、決められた工法、材料、仕上げから選択するだけですので、設計と言うほどの行為はありません。

着工後も工業製品を使いますので、あっという間に出来上がります。

 

私たちのドームハウスは、無限の選択肢の中から最適なものを選び設計を行います。

設計期間は家をつくる工事期間より長くなることが多く、

全てがスムーズに行った場合であっても、

プランニングを行う基本設計に3ヶ月、

構造計算や数十枚の図面を作成する実施設計に3~6ヶ月。

確認申請等の行政への申請に、通常1~3ヶ月くらいは見ておかなければならないため、合計すると半年以上一年近く掛かることはざらにあることです。

 

実施設計にそんなに掛けないで、なるべく早く現場に入って貰いたいです、とみなさんおっしゃいます。

そうしたいのはやまやまですが、それがなかなか難しいことを具体的にお話し致します。

 

 

内部のプランニングが終わり、ドーム本体やエクステンションのデザインが終わると、こんな感じに外観パースが出来上がります。

この時点では、構造はまだ経験的になんとなくの状態。

次に、希望のプランが成り立つよう、柱や梁、ドームのパネルを設計していきます。

ドーム以外のエクステンションは、普通の家と同様の構造設計を行った後、ドーム屋根との接続や、地震時にどういった動きをするか、大雪が屋根の上に積もったらどの様にその重さを支えるか等を検討しながら構造設計をしていきます。

構造設計の要素は、建物本体の重さ、中に入る物の重さ、雪の重さ、地震時に横から掛かる力、横から吹き付けてくる強風の力、これらの要因を順に考えながら設計していくよう建築基準法により定められています。

内部は、ドームの屋根パネルとは切り離された、全く別の構造体です。

丸いドーム屋根自体は、完成された完璧な構造体

これに内部の床や壁をいろいろとくっつけてしまうと、完成されている構造体が変な力によって崩されてしまいますので、

ドームはドーム、中は中と考え、別の構造体として設計していきます。

2階壁、2階床、1階壁、1階床、そして床下や基礎、と順々に各層毎に設計を行います。

これらの内部構造の設計は、3dで行わなければ上手く行きません。

中身が全くない、がらんどうのドームで無い限り、この設計工程を踏まなければ作ることは出来ません。

だんだんと室内側に迫ってきている丸いドーム屋根に、壁や天井がひっかる事がないよう、内部の構造体をパソコンの中で組み上げていきます。

ドームハウスは、エクステンションの構造によってデザインが大きく変わります。

ここでは、部屋を付けたり、水廻りをエクステンションに出したり、玄関ポーチを付けたり、といろいろと楽しむことが出来ます。

しかしながら、ドームハウスの構造設計の中で一番難しいところがこのエクステンション。

どうやってくっつけるかを、構造体レベルで考えていきます。

天井が下がってきたり、壁が低くなっていたりと、なかなか一筋縄ではいかない所。

 

これら内部構造が出来上がると、やっと基礎の検討が可能となります。
基礎の設計内容は、地盤の解析から行わなければ危険です。

また、建築基準法でもその様な設計方法が求められていますので、別記事にてご紹介致します。
重い物が載るところは強く、軽いところは簡単に、コンクリートと鉄筋を組み合わせることによって、家を支える基礎を設計していきます。

地盤データを読む(その1:表面だけ緩い土地)

2019.02.02

 

ここ数年、普通の家づくりでも3d設計の手法はだんだんと一般化してきています。

しかし、基礎まで3dで検討をしなければ建てることが出来ない家は他にはありません。

なぜなら普通の基礎は四角ですが、ドームハウスの基礎は多角形。

基礎がずれるとドームが上手く載りません。

多角形の基礎を極力簡単に作れるよう、新しい基礎形状を開発し続けていますが、なかなか大変なのが基礎。

このように特別な設計をいろいろなところで行わなければならないドームハウスの設計ですので、実施設計に時間が掛かってしまうのは、仕方の無いことなのです。

 

 

これは、セルフビルドでドームハウスを作る場合も同様です。

基礎とドームパネルの組み上げまでをプロに頼んで、後は自分で作りたい場合も、設計はこんな風に全ての工程を行わなければなりません。

内部の壁などの構造設計が終わらなければ、基礎を作ることが出来ませんので。

がらんどうのドームや仕切り壁のない小型のドームであれば、それほど大変な設計にはなりませんが、2階があるだけで、こういった設計作業が必要になってきます。

 

セルフビルドの場合であっても、設計を行わなければならない理由もここにあります。

ドームハウスにご興味をお持ちの方へ

一人で家族のみの協力の下で始めた、森のドームハウス建設に始まり、
ドームハウスの専門家が集まり始めたドームドリーマーズを経て、
より多くの方々への情報を伝えるためのドームハウスインフォ設立に至りました。

 

お陰様でドームハウスの実績や活動内容も充実してまいりましたので、
カタログを制作してお届けすることができるようになりました。

ドームハウスにご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

catalog

ABOUTこの記事をかいた人

アバター画像

一級建築士事務所 studioPEAK1(スタジオピークワン)代表。 山梨の県北、南アルプス山脈甲斐駒ヶ岳の懐に位置する白州町の森にて建築・設計活動をしています。白州に活動の場を移して十数年。この自然の中でしか感じることが出来ない事を学び吸収し、建築に反映してきました。技術力やデザイン力のみではなく、心からわくわくし、楽しくなる建築をめざし日々精進しています。