木造の世界は非常に奥が深いです。
アカデミックな世界と共に研究活動を始めて数年、木質構造の権威の方々と知り合い、学び続けています。
コンクリートや鉄骨については、長年に渡り世界中で研究されており、国内にも研究者が多く理解が進んでいます。
しかし木造の建築技術に限っては、まだまだ分からないことがあります。
これ、嘘のようなホントの話なんですね。。。
2019年9月末、今までの研究チームに加え、新たなメンバー、強力な教授陣と共に実験の日を迎える事が出来ました。
今年の研究は、今までとは規模が異なるため、実験日数もしっかりと確保しました。
1日、2日では終わらない内容となるため、なんと一週間を確保。
私も泊まり込みで立ち会いを行いました。
始めてのことですので、何が起こるか分かりません。
準備、シミュレーションを重ね、初日を迎えました。
どの部材のどの位置の、どんなデータを収集する必要があるか。
どういった手順でデータを集めるか。
ある時は夜中まで研究室に集まり、様々な角度から検討を重ねて頂きました。
実働部隊は大学生、大学院生、助手の先生。
多くの実験を重ねてきた方々だからこそ、気付き分かることがあります。
我々の本拠地、八ヶ岳で製作した実験用のドームパネルを現地に持ち込み、学生さんたちと組み立てます。
建築の構造実験は、いわゆる破壊実験。
壊すことによって理解を深めます。
ドームパネルから何十本も延びるケーブル。
その先には電気信号を読み込む専用装置。
そして記録、解析を行うコンピュータへ。
ドームパネル本体には、いくつものセンサーが取り付けられています。
上から荷重をかけていった際に、ドームパネルの構造材にどれくらいの力が掛かっているのかを、電気的に調べます。
木材に力が掛かると、材は徐々に曲がって行き、耐えて耐えて耐えきれなくなったところで、バキッと破壊します。
何本もある材料のどこに力が流れるのか。
どこを通って、どこに力が行き、どこが壊れるのか。
そういった事をこの実験によって求めることが出来ます。
コンピュータによる解析が進んだ現在では、「構造物がどのように破壊していくか」をコンピュータの中でシミュレーションすることができます。
実際の建物のように組み立てた構造物を、コンピュータ上で壊してみることが出来るのです。
しかし、そのシミュレーションは果たして正しいのか。
コンピュータ内で壊れていく建物同様、実際も全く同じように壊れていくのか。
複雑なドームに限っては誰も答えを知りません。
誰も壊したことがないので、見たことがない。
この実験によって、本当はどういう風に壊れるのか、を知ることが出来るのです。
さぁ、いよいよです。
晴れ渡った青空の下、まるでカリフォルニアかどこかの大学キャンパスのようだなぁ~
と、広い学内でちょっと迷子になってしまいながら、実験初日を迎えることが出来た喜びをかみしめるのでした。。。
木造ドームハウスの構造がどういうものかを本当に理解している人は誰もいません。
分からないことがあるからこそ、研究をし、実験をし、真実をつかもうと頑張っています!
そしてこの結果を設計に導入し、誰もが安全に暮らせるドームハウスをつくる事につなげて行きます!