「日本建築学会」での論文発表、私たちのチームは3者に別れ、3つの課題をそれぞれの枠で合計3枠に渡り発表させてもらいました。
一人は私、設計者。
次の一人は、建築構造研究者の神戸准教授。
そしてもう一人は、建築構造計算ソフトの開発会社社長でありプログラマー。
私たちの研究開発チームは、建築士や構造家、大工だけでなく、主要メンバーにプログラマーさんがいることが大きな強みでもあります。
木造ドームハウスの構造設計は、一般的な在来木造住宅と異なり、紙の上で手計算で行うことが出来る建物ではありません。
計算をする内容は、建築基準法に基づいて行う構造チェック。
地震力に対して、積雪荷重に対して、風圧力に対して、と決められたチェック項目を一つずつ埋めていく作業であり、その内容は一般の建物と同じです。
しかし、木造のドームハウスは、ドームを構成している構造の在り方が、一般的な柱・梁から構成される建物と比べ、大きく異なります。
例えばフレーム梁材。
ドーム屋根を作っている三角屋根は、一つ一つ三角形から構成されています。 その三角は木材のフレームから出来ており、在来工法での柱や梁と同様に、木造フレームが建物を外力から守っています。
普通の木造住宅の梁は、通常全て地面に対して水平、垂直です。
斜めに置かれることはありません。
しかしドームハウスのフレームは全て球の中心に向かって、傾いた状態で梁材が設置されています。
一本も同じ方向を向いている物はありません。
また、例えば風圧力。
建物に吹き付ける風の力に対して、構造材の強度に問題がないかを計算します。
ここでも、屋根を構成している三角の表面が、全て異なる方向を向いています。
風が横から吹いてきて、建物に当たり、建物の表面を風下方向へ押す力が働くとき、全ての面に異なる角度で斜めに風が当たることになります。
こういった複雑な形状を、間違えることなく解析ソフトに入力する為に、私たちはいくつかのプログラムを開発しています。
自動で入力することにより入力手間を減らし、同時に入力ミスををなくすことができます。
そのように日々進歩している設計手法ですが、現在の構造設計の方法はと言いますと、
まず、プランニングが終わったドームハウスの図面を、3dにて立体的に作り込みます。
3dの立体構造を、柱と梁とドームのフレーム構造のみにして、意匠設計の内容が構造的に実現できるかどうか検討を行います。
柱梁の構造部分を、線だけのワイヤーフレームにします。
各線の端部は(X ,Y ,Z)の座標を持っており、そのデータを構造計算ソフトに入力。
ワイヤーフレームデータを流し込めば、計算の準備が整う仕組みになっています。
現代の建築設計は、こういった専門家による設計技術革新の上に成り立っているのです。