ドームの中心に据え付けた二股の大黒柱。
敷地に生え育った赤松を使いました。
こちら、伐採の様子です。
土地に生えている木を建材として使用するには、
皮をむいて、
乾燥させて、
何度か製材をして、
組み合わせられるように加工し、、、
と大変手間のかかる作業が必要になります。
それでも自分の土地に生えている木を使って家を建てると言うのは、夢がありますし、理想的です。
そこで、切った木を自らの手で建材になるまで加工し使おうと決めました。
何十本もの柱や梁を使用しますが、そんな中でもひときわ目を引くのがこの二股の大黒柱。
こうして御柱のよう立ち上がるまでには、乗り越えなければならない様々な困難があったのです。
丸太は、そのまま柱として使うと、乾燥と共に回転していきます。
製材すると木の繊維を切るため、動きも少なくなるのですが、この乾燥による暴れが本当に厄介で、ねじを巻くように少しずつ回転していくんです。
何十年もかけて乾燥した丸太であれば、乾燥による動きも少ないのですが、根元の直径が1m近くもある切りたての丸太は、乾燥による動きを止めるには、十年以上を必要とするのではないかと思います。
乾燥機に入れて機械で乾かす方法もありますが、巨大な二股の丸太をトラックで運搬し、乾燥機に入れるというのは、費用以前に不可能だろうとの事で断念。
このドームでは乾燥により少しづつ動いてしまっても問題が起こらない使い方にしました。
そもそも、ドーム天井はそれ自体を支える柱を必要としません。
この二股大黒柱も、2階の一部の床は支えていますが、ドーム天井を支えている訳ではありません。
2階の床から上は、デザインとして取り入れているに過ぎず、構造的には必要のないものです。
しかし、家にとっては顔となる大黒柱です。
このドームハウスの構造体が神秘的であるのは、やはり二股大黒柱のお陰でもあります。
またこの力強い存在感は、家族を守ってくれる家にふさわしい象徴だと感じます。
柱として加工した二股大黒柱を吊り上げ、最初にドームの中心となる部分に鎮座させます。
全ての柱、梁、ドーム構造よりも先に、この大黒柱を設置しなければなりません。
この巨大な二股柱を先に立てておかなければ、後からでは建物の中に入れることが出来ないからです。
何百キロもある柱を家の中心にクレーンで吊るし、そっと立てる。
直立させた二股の大黒柱を、倒れないように左右から梁を突き刺して固定する。
それだけの作業なのですが、これが誰にでも出来る訳ではなかったのです。
丸太のままで、自然な曲線を描く二股の木。
この木のどこにどうやって梁を差し固定するのかを、地面に寝転がっている状態で木の表面に描き込んでいかなければなりません。
この作業を墨付けと言いますが、柱や梁の構造材は、全て転がした状態で組み合わせ部分の絵を書き入れ、仕口を加工していきます。
丸太も、二股大黒柱も、寝転がした状態で墨付けをします。
しかしこれが、合理的な近代木造建築しか経験のない、若い大工さんにはできなかったのです。
与えられた材料を、プラモデルのように組み立てるだけの仕事しかしてきていない大工さんには、難易度が高過ぎたんですね。
あちこちで声を掛けたり紹介してもらったりしたものの、出来ない、と。
2か月たっても、3か月たっても出来る人が見つからず、工事は止まったままです。
懇意にしている工務店さんに紹介してもらった棟梁には、そんな少予算で金もないのに、大変な設計をするんじゃないよなどと言われる始末。
「く、くっそぉ〜、、、絶対に、絶対に成功させてやる」
と奥歯を噛み締めながら耐えるしかありませんでした。
そんな中でも、捨てる神あれば拾う神もあるものです。
結局最終的に、寺院や仏閣を作っている大ベテランの宮大工さんなら問題なく出来るという連絡が入ってきたのです。
多くのお寺を手掛けている高齢の棟梁です。
- 予算が少なかった為、自分で出来ることは自分でやりたい。
- 材は敷地から切り出した木を極力使いたい。
- そして何よりも中心になるのはドーム構造。
- 普通の屋根は掛けない。
- ジオデシックドーム構造で在来工法の構造体を包み込みたい。
普通ではあり得ない要望にも快く応えて頂き、やっと止まっていた木工事を始めるところまでたどり着いたのでした。
(自宅ドームのセルフビルド奮闘記)