前回、地盤調査データを解析して、家の基礎を考える話をいたしました。
地表面が緩くても、表面の土は除去してしまうため問題無い、という事がデータから分かりましたね。
では、緩い地盤データとはどういったものなのでしょうか。
例えば、こちら。
前回とは異なり、表面は堅いようです。
しかし、1m掘った辺りに、「自沈」と表記されているところがあります。
「ジンワリ」の右の欄、荷重Wsw(N)の欄が500N。
これは、通常の半分の荷重である50kgの重りしか載せていないにも関わらず、ジワジワと自然に「自沈」、沈んで行ってしまったと読み取ることが出来ます。
この土地では、自然に試験体が沈んで行ってしまう「自沈層」がある部分が、
1m~1.5m
2m
2.75m~3.25m
とあちこちに確認できます。
「自沈」と「ジンワリ」の表記があるところですね。
深く貫入していった先、3.45mまで掘り進めると、突然地盤が堅くなりました。
3.45mの所にある「空転」の表記は、最大の100kgの重りを載せて回転させたが、これ以上深く試験体を入れ込む事が出来なかった、という意味になります。
この沈まなくなったポイントを、「支持層」と言います。
建物の重さを支持できる地層ということです。
この土地では、基礎の底面をこの「支持層」まで入れ込むような、深い基礎を作れば、家は沈みません。
しかし3.45mという深さは、地下室でも無い限り、それ程深く掘る事はありません。
かと言って、通常の基礎を作ってしまうと、家は「ジンワリ」沈んで行く土の上に載ってしまいますので、泥の上に車で載る様、ゆっくりと沈んでしまいます。
こう言った地盤の場合では、「支持層」まで届く杭を打ち、その杭の上に家を載せる様に作ることが望ましい、という判断になります。
ちなみに杭の本数は、小さな家であっても数十本~百本以上にもなりますので100万を超える地盤改良費が掛かる地盤だと言えます。
杭は、鉄管であってり、コンクリート電柱のようなものであったり、円筒状に砂利をあたかも柱のように地中に入れ込んだりと、様々な工法があり、現場や地盤の状況によって適切な工法を選択することになります。
続いてこちら。
こちらの地盤はどうでしょうか。
同じく「自沈」の文字が並んでいます。
0.5mの深さの所に、N値が3.6の場所があります。
3.6であれば、前回の地盤強度で言うところの、36kN/㎡あるため、布基礎でも大丈夫な地盤とも取れます。
しかしその下の層に
2.3、
2.3、
3.8、、、ちょっと良いけど、また、
2.3
と緩い地層が続いています。
これは、たとえ表面に硬い層があるとしても、一時的に車で行き来する等により、表面が堅くなっただけで、地盤自体は強度のない緩い地盤と判断するべきでしょう。
ここもまた、杭基礎による地盤改良が必要な地盤ですね。
「自沈」や「ジンワリ」、「ユックリ」等の文字が並ぶところは要注意ということです。
こんな現場もありました。
こちら。
この土地は表面がN値で3.0。
その下が一時的に3.6になりますが、
またすぐに3.0。
そして後は3.6が続いています。
3.0であれば、地盤強度で言うところの、30kN/㎡ありますので、問題はなさそうです。
しかし、75cmの所。
この現場では、丁度、基礎の底面に当たるところでした。
左の欄には「自沈」と表記がありますので、少々心配が残ります。
そこでここでは、基礎工事の際に実際に掘って3.0が何なのかを確かめてみることにしました。
すると、この部分だけ黒い「腐葉土」が深くまで堆積していることが分かりました。
大きな木の切り株が昔ここにあったのでしょうか。
2mくらいの大きさに、この一角だけが「腐葉土」なのです。
腐葉土は柔らかく、建物を載せる事は出来ません。
幸い柔らかい部分は一部だけでしたので、黄土色の「支持層」が出るまで腐葉土を除去してもらい、代わりに砂利を入れて強度を出す方法を取りました。
緩い地層は取ってしまえば良いんです。
これなんかも、そういった種類の地盤になります。
0.25m 2.3
0.50m 2.3
0.75m 2.3
1.00m 5.5
「スー」っという表記がちょっと怖いですよね。
荷重を少し軽くしても、「スー」っと沈んで行ったということですので。
そんな地盤でも、上部の軟らかい土を取ってしまい、1mの所にある堅い「支持層」に基礎の底面を着けてやれば、大丈夫です。
しかし、施工地域の「凍結深度」が浅い暖かい場所であるとすると、基礎の底面は0.30m程度の深さ。
そうすると、70cmもの軟らかい土が家の下に残ってしまうことになります。
左の欄の「スー」「ユックリ自沈」。
あなたの家が、スーーー、、、、
地盤強度データを元に、設計をきちんとしてもらいましょうね。