「た、助けて下さい!」
当初はそんな気持ち、心の叫びでした。。。
以前、研究機関と共に開発を行う理由をお話ししましたが、
実のところ、もっと深刻な問題があったんです。
都市計画区域外と呼ばれる人口の少ない山間部は別として、
家を建てる時は、必ず役場の設計審査を受けなければなりません。
建てる家が建築基準法を初めとする法規に則ってきちんと設計されているか、
また設計通りに安全な家が建てられているかどうかの検査も必要とされます。
これを「建築確認申請」と言います。
確認申請には、建物の形状によっては、
何百枚にも及ぶ構造計算書を求められる場合があります。
構造計算は、通常作る側も、見る側も、
建築士の中でも構造設計を専門とする、
構造建築士といわれる構造の専門家が担当します。
平屋や2階建て程度の木造住宅であれば、
意匠設計を専門としている建築士でも
構造設計を行うことが出来る人はいます。
しかし難しい構造の建物となると、
構造建築士に構造部分だけ手伝って貰うことになります。
さて、ドームハウスの確認申請。
ぱっと見、木造ドームハウスは
平屋や2階建ての簡単な建物の部類に入るように感じるのですが、
細かく見ていくと、
三角の集合体であることに気が付き、
え?となります。
確認申請を提出する先である検査機関の構造家さんも、
これはちょっと我々では、、、
と尻込みしてしまい、
仕舞いには、受け付けることさえしてくれず、
いわゆる、たらい回しにあってしまいます。
今時、申請を受けてくれないなんてあり得ないし、
そもそもそれ違法でしょう、
と専門家の皆さんは言われるのですが、
実際にそうなので仕方ありません。
その原因は、
彼らが設計をしたこともなければ、
審査をしたこともない形状のため、
どうやって計算をすれば良いのかが分からない、
というのがその理由です。
いえいえ、計算は我々がやってますから、
見て貰えば良いだけですので、
とお願いしても、
見ても分からない。
そもそもその計算方法であってるのかどうか、
考え方自体分からない。
と言う具合です。
何度も何度も、
あちこち回って断られ続ける、
と言う何とも抗しがたい状態に陥ってしまっていました。
そして結果、
「た、助けて下さい!」 なのでした。。。
あれから数年、
少しづつですが前進する中、
私たちのドームハウスは、
また新たなフェーズに入っていくことが決まりそうです。
神戸先生に連れて行って頂き、ご紹介頂いた新しい研究機関。
木質構造、、、普段は聞き慣れない言葉ですが、
建築の世界では木造のことをこう言った言葉で現します。
木造というと住宅レベルの建物をさすことが多いですが、
柱や梁を大断面の集成材でつくる、
木造のビルが近年建設できるようになりました。
研究機関では、小さな木造建築ではなく、
そういった大型の木造建築の研究が盛んに行われています。
元々、木の文化を持つ日本は、木造建築分野では世界の最先端。
日本でトップということは、
世界でもトップというのが木造建築研究の世界です。
そんな世界中で活躍していらっしゃる先生に、
ドームハウスの研究をお手伝いして頂く話をしていたところ、
「ドーム、ドームって言うからよく分からなかったけど、
それ、シェルだよね?」
「三角のパネルを組み合わせて作りはしますが、
パネルはそもそも木材の組み合わせですし、
骨組みはトラス構造なんですが。。。」と私。
「隣の研究室、シェルの専門家がいるよ。」と教授。
私たちが打ち合わせをしていたすぐ隣の部屋には、
「シェル構造研究」という研究室があったのです。
そんな流れで、
木を組み合わせて造る事を研究していらっしゃる第一人者の先生が、
途中から打合せに参加して頂ける事になりました。
「シェル構造」とは、貝殻のシェル。
三次元に広がる面を木で作ることの研究という意味。
まさに、ドームそのものなんじゃないかと、感動してしまいました。
令和元年、不思議で素晴らしい出会いと共に、
新たな研究開発が始まります。
つづく