家を建てる前に必ず必要となるのが設計です。
その設計を行うために必要となるのが「地盤調査」、という話を先日致しました。
土地探しをしていると、きれいな土地はたくさんあります。
平らに整地されていて、道路も舗装したて、日当たりが良く、庭に植栽が植えられていたり。
不動産屋さんも良い土地ですよ、掘り出し物です! と。
そんな良さそうなところでも、必ず地盤調査は必要です。
数万円掛かりますが、数万円である程度確認できることを考えると、安いものだと思えるような話を。
こちらの記事は、表面を見ただけでもなんとなく分る地盤の素性から、余分な費用が掛かるかどうか判断できる、という話でした。
今回は一歩踏み込んで、専門家はどうやって判断を行うのか、という話に入り込んでみたいと思います。
不動産屋さんに紹介してもらった土地。
家族みんな気に入っています。
地盤調査もしてくれていて、調査データを見せてもらいました。
良い地盤ですよ、データもこんな風にしっかり出ていますし!
と地盤調査データまで見せて貰えました。
しかしながら、
え? なんのことやら、、、
だと思います。
地盤調査データは、数字と、説明とも取れなさそうな単語だけから構成されています。
だからどうすれば良いのかは書いてありません。
不親切に見えますが、これが標準です。
評価が書いてあるデータもありますが、その評価ははっきり言って信用できません。
何万も払って調査をしてもらったのに評価が書いてない。
しかしそれは当然な事なのです。
そこで安易に「大丈夫ですよ、良い土地ですよ、絶対沈みませんから。」などと言ってしまうと、もし万が一、建てた家が沈んでしまうと、その会社は大変なことになってしまいます。
判断材料は提供してくれますが、責任の伴う判断はしてくれません。
また、この頃は地震も多く、地盤の崩壊や不動沈下によって建てた家が傾いてしまったという事例が多く出ていることもあるのか、大丈夫な地盤であっても「杭や地盤改良を必要とする地盤です」と表記されていることが多く見受けられます。
これのどこが緩いの?と不思議に思うことが頻繁にあります。
さて、私たちがこれをどうやって使っているのかを簡単にご説明いたしましょう。
地盤はそれぞれ地域によって違いがあり、同じ数値でも、土質によって全く異なる場合がありますので、ご注意下さいね。
1.表面だけが緩い地盤
右端の数値が地盤の強度を表します。
ここでの目安の数字は30。
30kN/㎡(キロニュートン・パー・へいべい)と読みます。
1平方メートルに30kN、、、
つまり、
1kg は 約9.81N
1kN は 約0.102t
なので、
簡単にすると、30kNからゼロを一個取って、トンにするわけだから、
だいたい 3トン と言うことです。
1平方メートルは、1mx1m の土地。
3トンは車1~2台の重さです。
それより軽いと沈みません。
それより重いものが載ると、地面が負けて沈んでしまいます。
建築基準法では、その判断は設計者に任せているものの、基準としては30kNを境に、基礎の作り方を変えるような表記になっています。
30以上は布基礎。
30未満はべた基礎。
20未満になると、地盤改良をしたり、杭を打ったりということになる可能性が高くなります。
しかし、基礎の設計は、実はそんなに簡単な話ではありません。
ここを間違えると、家が沈んだり、基礎が折れたり、また逆に地盤改良に家くらいの費用が掛かったり。
ということに繋がります。
みなさん、あまり話さないですし、教えてくれないんですけどね。。。
さて上の試験結果では、30kN台は上から3行ですね。
4行目は68kN。
5行目は174kNとなっています。
そうすると1行25cmですから、125cm掘ると非常に硬い地盤に当たることが分ります。
174kNは、17.4トンです。
木造の家はそれ程重くないですので、ここに家を支えられる硬い地層があると判断できます。
気になるのは1行目に、「ユックリ」と表記があること。
これは100kgの重りを載せたところ、何もしなくても「ユックリ」と沈んでいった、という意味です。
しかし、沈んだのは試験体のヤリであり、家ではありません。
雪の上でも、尖ったものは沈みますが、スキーやスノーシュー、かんじきを履いていれば沈みません。
かんじきの大きさをどれくらいにすれば沈まないのかを考えるのが、基礎の設計になります。
もうひとつ、表面から25cmの深さまでが緩いため、その部分を全て取ってしまえば問題なくなるとも判断できます。
表面の30.0kNだと沈みますが、25cm下の37.2kNであれば沈まないかもしれません。
基礎をどんどん深くすると、地盤は硬くなり安全にはなりますが、地面の中のコンクリートや鉄筋の量が増えてしまい、家はどんどん高額になってしまいます。
上に載せる家が1平米あたり37.2kN以下になるよう、設計をすれば良い訳です。
ちなみに、寒い地方では「凍結深度」というもう一つ重要な要素があります。
地面の中、何センチまで掘れば凍らないか。
これはピンポイントで、土地のある地域、標高、最低温度によって変わってくるため、同じ市内でも隣の町でも異なってきます。
基礎の設計を行うには、地盤の強度と共に、あなたの土地の「凍結深度」を調べる必要があります。
寒い地域では、このように基礎は凍結深度まで掘り下げなければならないため、表面の柔らかい土は取ってしまいます。
標高ゼロmで、温かい地域であっても、基礎の下に砂利を敷いたり、平らに均したりする必要があるため、表面の土は取らざるを得ません。
そんなことを考えると、このデータの表面が「ユックリ」沈むことは、全く問題がないものと判断できます。
ちなみに、表面の25cm~50cm。
データで言うところの、30.0~37.2kNの土は、何百年もかかって周りの木々から降って来た落ち葉が、年月と共に腐って土になった、ふかふかの「腐葉土」でした。
基礎を作る際に、地面を掘ります。
掘られた地面の断面を見ると、そのデータ、その数値がどのような土なのかを見て、触って、つぶして、あー、なるほど、と判断が正しかったかどうかの答え合わせができます。
答え合わせで間違っていたことが分かることもあります。
その場合は、現場での判断により地盤改良を行いますが、前もって調査をしていた場合には、大変な工事になることは決してありません。
こうして安全に安全を重ねて、家づくりを行います。
では、地盤改良や杭を打たなければならない土地のデータはどんなデータなんでしょう。
気になりますね。
次回はそんなお話を。