ウチには保護犬の家族がいます。
この子。
山の中の集落でうろうろしていた仔犬を保健所に連れて行かれてしまい、保護犬活動家さんに保護して貰ったわんこです。
保健所では数日で殺処分されるそうなので、保護犬活動家さん様々です。
子ども達と一緒に登山をしたり、川に水遊びに行ったり、かけがえのない家族として暮らしていた7年目の秋の夜、それは突然やってきました。
夜寝ているときにムックリと起き上がり、その場でクルクル回り始めたのです。
頭を低くして、自分の尻尾を追うように、その場でゆっくりクルクルと。
3~4回まわったでしょうか、バタンとその場に倒れ込み、両手、両足をバタバタ、バタバタ。 寝転がっている姿勢のまま走り始めました。
だんだんと顔がゆがみ、目をぎゅっと硬くつむって、口からはよだれと共に悲鳴とも取れる細い鳴き声。
首を縮めて、体中の力を入れて痙攣し、その状態が5分前後も続きました。
癲癇(てんかん)の発作でした。
初めての事で、あまりにも激しいため本当にびっくりして、このまま死んでしまうんじゃ無いかと思ったほどです。
この夜は朝までにもう一度の発作がありました。
翌日、動物病院へ行くと、珍し事では無く、てんかん持ちのわんこは結構多く、飼い主さんが慣れるしか無いですね、と。
もう一回出たらまた来て下さいとのことで、様子を見ていましたが、半月後にまた発作が。
今回は薬を処方して貰いましたが、これが結構きつい薬のようで、飲むとぼーっとしている状態になってしまいます。
段差でつまづいたり、高いところから落ちそうになったり、寝ているような状態です。
いつ出るか分からない発作に備えて、薬は常に飲んでおかなければならないそうで、普通の散歩もままならない状態になってしまいます。
そこで、フラフラしない程度に薬の量を減らして貰いました。
そうすると、散歩も以前通りに出来るようになり、フラフラするのも直りました。
ほっとしたのも束の間、また癲癇(てんかん)の発作が。
癲癇発作で死ぬことはないですが、連続して何十回も起こると、熱が出て危ないということで、解熱座薬剤を処方してもらいました。
初めは一晩に3回の発作だったのが、次は5回、次は10回、次は15回。
発作の感覚も1時間おきに出てしまうようになり、時には数十分後に。
そんな毎月の発作が2年も続いたでしょうか、とうとう発作の間隔が一ヶ月も持たなくなってきてしまいました。
3週間も経たずして、一度の発作回数が20回以上。
24時間の看病が必要になる頻度です。
発作の後数日間は、足がフラフラして普通に歩くことが出来なくなります。
もしかすると、脳の中に深刻なダメージを受けているのかもとも思います。
何か良い方法はないものか、いろいろと情報を集めました。
そんな中、「漢方薬が効いた」という話を見つけました。
犬用の薬でも、癲癇(てんかん)の薬でもありません。
人用の普通の漢方薬です。
急いでネットで注文し、試してみました。
相手は犬ですので、薬を飲ませるのも大変です。
餌に混ぜても、薬だけ残してしまいます。
そのため、癲癇の薬はいつもチーズにくるんだり、鰹節にくるんだり、だましだましやっていました。
だんだんと慣れてきて、朝晩の薬の時間には、自分でせがむようになってきていました。
ぼーっとしたり、フラフラしないように、癲癇(てんかん)の薬を少なめにして、漢方薬を人に対する必要量の1/4くらいにして与え始めました。
1ヶ月が経ち、2ヶ月が経ち、3ヶ月が経ち、それまでの最高記録、半年を更新。
漢方薬が効いたのです。
癲癇(てんかん)は、直す術はないと聞きます。
薬で抑えるしかないと。
しかし薬は肝臓に負担が掛かり、他の病気になる可能性も高くなるそうです。
その点、漢方薬は自然由来の成分なので、体に負担が掛かることはありません。
ウチでは、完全に薬を止めることは出来ませんが、減らすことはできています。
発作時には、失禁をしてしまい、意識が戻っても不安の最中で十数分間はよだれを流しながら歩き回り、家中が汚れてしまいます。
いつも発作は夜寝ている状態から起こり始めるため、睡眠は取れず、片付けも大変で、家族でふらふらになってしまいます。
それが数週間毎から、半年ごと、若しくはそれ以上になってくれれば、私たち家族も助かりますし、それ以上に、苦痛に顔を歪めてキャンキャンと泣き叫ぶわんこを、楽にしてあげられます。
そして今また、無発作記録、6ヶ月に入ろうとしています。
ウチのわんこには、漢方薬が確実に効いてるのだろうと思います。
薬のことですので、人に勧めることは出来ません。
ウチではこうだったと伝えるだけです。
ちなみに、どうしてこの漢方薬が効いたのかと考えると、この薬は、不安な精神状態を和らげてくれる効能があるそうなのです。
【漢方解説】抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
「肝」の高ぶりを抑える働きがある
漢方では「肝(かん)」が高ぶると、怒りやイライラが現れると考えます。 「抑肝散」はこの「肝」の高ぶりを抑えることから名づけられた漢方薬です。 もともと子どもの夜泣き、疳(かん)の虫に使われていた薬で、現在は大人の神経症状にも使われています。 体力は中程度で、怒りっぽい、興奮しやすい、イライラするなどの症状のある人に用いられます。 具体的には、神経症、不眠症、歯ぎしり、更年期障害、血の道症(女性ホルモンの変動に伴って現れる体と心の症状)、子どもの夜泣き、かんしゃく(神経過敏)などが挙げられます。
とツムラさんのHPに解説してありますので、おそらく、不安な状態が続くと、脳の一部分が活発に動きすぎて暴走し変な信号を発してしまい、体中の筋肉を痙攣させてしまうのでは無いだろうかと考えています。
ウチの子は、低気圧、特に爆弾低気圧や台風が来ると必ず発作が起こっていました。
また獣医さんのお話だと、普通の生活にない刺激があった夜、例えば老夫婦二人の暮らしの中、孫が遊びに来たとか、そんな単純な刺激で誘発される子もいるとの事です。
我が家では、抑肝散加陳皮半夏 ではなく、「抑肝散」 のみの錠剤を与えています。
錠剤でなければ毎日2回は大変です。
「抑肝散」 だけでも、全く問題はないように感じられますので、楽な錠剤を、朝晩1粒づつ癲癇の薬と共に与えています。
また、発作との付き合いが長くなってくると、今晩来るな、と分かるようになってきました。
発作の前の晩は、外を異常に気にして、出たり入ったりを繰り返したり、家の中をウロウロと止めどなく歩き回ったり、ピタッと足元にくっついてきて離れなかったりします。
そんな時は、追加で漢方薬だけを与えています。
台風も近づいているし、足元にピッタリだし、これは絶対来るな、と言う日もなんとか発作を起こさずに乗り切れることも最近では出てきました。
発作の頻度が減ったのは、もしかすると、今10歳なので歳を取ってきたせいなのかもしれません。
獣医さんも分からないとの事ですので。
それでも、苦しむ子を見なくて済む日が続いてくれるのはとても嬉しいです。
犬は家族ですから。