ドームハウス開発、大学との協同研究(その4)

夏の実験から3ヶ月。
大学図書館の裏庭で、モニュメントとして学生達の目を楽しませてくれた実験フラードームですが、次なる大事な任務が待っています。

冬の「合板付き載荷実験」です。

夏の載荷試験では折れたり曲がったりという破壊は全く起こりませんでした。
しかし、部分的に釘が緩んだり、抜けかけたりしたパネルがありました。

まずはこれらのパネルを、初期実験を行う前と同じ、新品状態に組み替えることから始めます。

大学の授業がない週末に、てっぺん近くのパネルを中心に、約1/3のパネルを入れ替えました。
これで、また新品同様です。
全部を入れ替えなくても、部分的に代えられるところがドームの良いところです。

次に、今回は外部に合板を張り付けます。
実際の建物と同じように、屋根を張った状態で載荷をし実験を行います。
三角に切った構造用合板を75枚、釘で打っていきます。

フラードームを家として構成する場合は、窓やエクステンション部分を抜き取りますので、基本形ではパネル数60枚ですが、今回の実験は半球になるまで作るため、合計75枚のパネルを使用します。

一枚一枚の合板は、三角パネル1つの大きさの中で切れ目なく一枚で作らなければならないため、4x8板(シハチ板)を使用します。

実験に備えて、12月17日と23日の二日に分けて施工を行いました。

 

2017年の大学の授業も終わり、寝静まった学内。

幸いにして大晴天に恵まれた12月26日朝、今年最後の実験が始まりました。

構造体に貼り付けてあるセンサーを全て貼り替えるところから始めます。
ドームの骨組みの表面を、紙ヤスリで丁寧に削り取り、ふぅっふぅっと粉を吹き飛ばし、きれいに吹いた上でセンサーを貼り付けます。
センサーは薄ーいシート状のもの。
電極が付いていて、コードの端部をコンピューターへと引っ張っていきます。

加重を掛けるタンクは、夏に使用した物をそのまま使用。
ドイツ語が書かれていたので、たぶんドイツ製。
1tの農業タンクです。

前回の失敗を踏まえて、鉄の鎖とちょっと太くした木製架台も完璧にセットしました。
そしてタンクの下にある排水コックに、排水ホースを取り付けます。

夏の実験でのドームは、骨組みだけでしたが、今回は屋根付きです。
全てのパネルを張り付けてしまうと、中には入れません。
配線と配管も、ドームに穴を開けるわけにはいかないため、床に丸い穴を開け、そこから外に出すことにしました。

前回は実験途中でタンクが歪んだり、タンクの底が床に付いてしまったり、と思いもよらない不具合に遭遇したため、今回は一度、予備実験を行います。

予備実験は、適当な加重を前もって掛けておくことにより、ドーム骨組みの歪みやバランスを取ることにもつながります。
取り替えたパーツを、隣同士のパーツとぎゅっと引き締めあっておける訳です。

とりあえず、500kgの載荷を行い、全てのセンサー、全ての給排水パーツ、全ての人員が問題なく動くことをチェック。
排水を行い、全てをリセットします。

排水ノブを回しましたが、なぜか水が抜けません。
どうも排水ホースの内側同士がくっついてしまっているようです。
ロールケーキのようにくるくると巻いて保管していたからでしょう。
ぺりぺり中をはがしながら広げ、内部の通路を確保し、準備万端です。

センサーからのデーターは、シーケンシャルに連続してコンピュータに入って来る仕組みですが、切りの良い重さのところで、その都度水を止め、手動でポイントポイントのデータ取得を同時に行います。

注水がきっちり止まったことを確認した後、コンピュータのキーを押し、部分的なデータを記録。

今回は全てのパネルに合板を張り付けなければならないですので、この重要な作業を行うために、誰か一人が中に、、、

この大切な役を担ってくれた若者がNくん。
ありがとー、Nくん!

宇宙船の中に入り込み、さぁ実験開始です。

「注水開始!」

神戸先生の声を皮切りに、タンクに水が張られ始めました。

合板が張られているため、変化は全く分かりません。

注水の音も、今回はそれほど聞こえてきません。

ドームの中では、おそらく反響しあって、ゴーゴーと水音が響いていることでしょう。

 

「もうじき100kgでーす。 3、2、1、ストップーーー!」

先生の声が静かな学内に響きわたります。

「記録しまーす。 はい、OK!」

「ちゅうすーい。」

今回はとても静かな実験です。

この作業を繰り返し、水の重量が750kgに達し始めたころです。

「みなさーん、今から未知の領域に入りまーす!」

 

前回、パネルから異音がし注水を止めた所に達したのです。

ここからは新たな領域。

まだ掛けたことのない重量を掛けて行きます。

 

「3、2、1、ストーップ! 800kg! 記録しまーす。」

何も起こりません。

異音も無く、見る限り歪みも無いです。

パソコンに表示されている折れ線グラフは、明らかに前回とは異なる曲線を描いています。

 

「これは、合板を張ることによって強くなっているってことですかね?」

「んー、強くなっているというか、それぞれのフレームの剛性は高くなってるよね。」

 

前回はフレームのみで保っていたため、全体がしなやかに曲がり重量を受け止めていました。

今回は各フレームが合板によって曲がりにくくなっているため、全く異なる動きを見せているようです。

 

静寂の中、淡々と作業はつづき、

800kg
850kg
900kg
950kg

そして、

「3、2、1、1000kg載荷しゅうりょーう!」

 

おーーーーー
おーーーー

パチパチパチパチ

 

前回のような異音もなく、静かに最終の荷重まで到達することができました。

自分が荷重に耐えているような気分で、なんだか嬉しいですね。

「Nくーん、中からパーツ端部の変化を調査してくださーい。」

中は照明を落とすと真っ暗です。

1tの荷重によって歪んだり開いたりしている箇所があれば、それは外からの光となって現れるはずです。

「あっ、ここ、すこーし開いてまーす。」

「光が見えまーす。」

中と外から、各端部、各フレームを細かく調べ記録していきます。

記録が終わり、パネルの1枚を外すと、やっと中からNくんが登場。


まるでアポロ13の月面探査宇宙船からの帰還ですね。
その笑顔は、偉業を成したかのようでした。

 

これで、2017年の全ての実験を無事、終了することが出来ました。

中心となって動いて下さった関係者のみなさんには、本当に心から感謝です。

このドームハウス研究開発の為の実験は、日本では初めての試みです。

どのようにしてドームハウスの構造計算を行うべきなのかを追求していくと、どこにもその根拠がなく、様々な計算を行った結果が正しいのかどうかの判断がつかない、、、
と頭を抱えたところから始まった共同研究です。

半世紀も前からあるジオデシックドーム工法なのにも関わらず、計算が出来ないなんて。

しかし、技術が進歩したからこそ分からないこと、という部分があるのです。

地震の時に、台風の時に、実際に計算通りに建物が動き耐えてくれるのか。

それを実証することがこの実験のテーマでありミッションです。

 

今回のデータは次の論文へとまとめられ、更に新たな実験へと引き繋いでいきます。

来年は、パーツパーツの破壊を行う、「要素実験」というものへと、まだまだ続いていくのです。

振り返ると、

全ての屋外実験を終えたドームが、笑っていました。

研究プロジェクトのみなさん、ありがとーーー

ドームハウスにご興味をお持ちの方へ

一人で家族のみの協力の下で始めた、森のドームハウス建設に始まり、
ドームハウスの専門家が集まり始めたドームドリーマーズを経て、
より多くの方々への情報を伝えるためのドームハウスインフォ設立に至りました。

 

お陰様でドームハウスの実績や活動内容も充実してまいりましたので、
カタログを制作してお届けすることができるようになりました。

ドームハウスにご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

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ABOUTこの記事をかいた人

和田 啓宏

一級建築士事務所 studioPEAK1(スタジオピークワン)代表。 山梨の県北、南アルプス山脈甲斐駒ヶ岳の懐に位置する白州町の森にて建築・設計活動をしています。白州に活動の場を移して十数年。この自然の中でしか感じることの出来ない事を学び吸収し、建築に反映してきました。技術力やデザイン力のみではなく、心からわくわくし、楽しくなる建築をめざし日々精進しています。